生まれ変りたいと思うことだけが生きがいの人間にとっては、自分の国も家庭も必要ではない。

生まれ変りたいと思うことだけが生きがいの人間にとっては、自分の国も家庭も必要ではない。
そんなものから解放されて生きることができたら、どんなにせいせいすることか。
そういう意志を表明するために、親からもらった名前は名乗らないことにした。自分の名前は自分でつける。
我利馬(ガリバー)。名字はいらない。
一刻もはやく生まれ変わるためには即刻死ぬのが条件だろうが、今死んでしまったら子どものうちに車に踏み踏みつぶされた蛙のようにみじめだ。それに死ぬためにも勇気は必要で、それはそうとう大きなエネルギーだと思う。どうせならそれを別のところで使いたい。
ぼくは今、あることを考えている。とうぶん秘密だ。
それはおいおい説明することにする。」
 

--引用--「我利馬(ガリバー)の船出 」灰谷 健次郎 (角川文庫)

この作品には、あるテレビコマーシャルの詩から導かれました。
「雨が降ったら傘さして 傘がなければ濡れてゆく そんな人生がちょうどいい」

素晴らしい作品です。この詩に巡り逢えなかったら、今の自分はありません。